Dear・・・
「智君。シャンプーなくなっちゃったからコンビニで買ってきてくれない?」


二階から母の声が響いた。


「自分で行けよ」


「ママもうお風呂入っちゃって裸なのよ」


「あー分かった、分かった」


面倒ではあるが、頭を冷やすには良い機会だろう。


「コンビニ行くけど、お前も行くだろ?」


智貴の言葉に博昭は返事より先に飛びついた。


大学生だと言うのに、博昭の行動には未だにどこか幼さが残る。


博昭は智貴の腕に抱きつくと引っ張るように店を出た。



冷たい風が、智貴の脳を刺激する。


確かにあの二人の間には友達以上の親しさを感じたことがあった。


博昭も含めた三人は幼い頃の付き合いで気が知れている仲だろうが、その中でも慶介と翔太の二人はさらなる親しさを感じていた。


それをずっと兄弟間の親しさだと思っていた。


まさか恋人同士だったとは。





智貴は複雑な面持ちで博昭を見た。


すると、博昭は手をひらひらとさせ、楽しそうに跳ねていた。


そのふざけた表情に、博昭にかわれていたのかもと、智貴の頭を過ぎる。


「なあ、博昭。さっきの話」


「さっきの話?」


博昭は智貴の顔をきょとんとした表情で見つめる。


何の話をしているのか、全く覚えていない様子だ。


「いや、俺の勘違いだったわ。」


覚えていないのならそれで良い、と智貴は博昭を詳しく追求することをやめた。
< 81 / 214 >

この作品をシェア

pagetop