Dear・・・
慶介の心臓は早鐘を打っている。


「ただいま」


「お邪魔します」


翔太に続いて、慶介は家へと入っていく。


声を聞きつけ二階からパジャマ姿の翔太の母が降りてきた。


「やっぱり、慶介君じゃない。こんばんは」


「こんばんは」


慶介と翔太の母が形式的な会話をしている横で、翔太は一人靴を脱ぎさっさと廊下奥のリビングへと向かう。


「あ。慶介、今日泊まってくから」


と、振り返り様に翔太は言い、そのままリビングへと入っていった。


慶介は翔太の後を追おうとするのだが、翔太の母に話し掛けられその場を動くに動けない。


「ホント、慶介君格好良くなっちゃってね」


慶介は返事に困り、何とか微笑む。


「うちの翔太ったら、バンドやってるくせにどうしてああも垢抜けないのかしらね。デビューしてもあの子絶対人気出ないわよ」


翔太の母の口からは次から次へと言葉が溢れ、慶介はそれに懸命に笑顔で答える。


そのやり取りは一向に終わる気配が見えない。
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