Dear・・・
すると、奥から見かねた翔太の声が聞こえた。


「母さん。慶介疲れてるんだし、いい加減自由にしてあげてよ」


すると、一度慶介の顔を伺うとあっさりとその言葉に従い、翔太の母は、おやすみなさい、とさっさと二階へと上がって行った。


ようやく動けるようになった慶介は、靴を脱ぎ翔太の後を追う。


すると、リビングからお盆にお茶を乗せ翔太が出てきた。


「もうそのまま二階上がっちゃって」


言われた通り、慶介は階段を上がり二階奥の翔太の部屋へと行く。


久しぶりの翔太の部屋は少し大人びた雰囲気に変わっていた。


模様替えされた部屋に違和感を感じ、慶介は入り口で立ち尽くす。


「お盆重いんだから早く入ってよ」


後ろから来た翔太が言う。

その言葉に慶介はようやく部屋へと入った。


翔太は机にお盆を置き、ベッドに背をもたれながら座った。


慶介は未だに部屋中を物珍しそうに見回している。


なかなか座る気配を見せない慶介に、翔太は隣に座るように指示を出す。


言われたとおり翔太の横に座るが、落ち着くことはなく視点が定まらない。


そんな慶介は妙に幼く、翔太の顔は自然と笑顔になる。
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