Dear・・・
「なにそわそわしてるのさ」


お茶を入れながら翔太が尋ねる。


「いや、部屋の雰囲気変わったなって」


部屋を見回し慶介が答えた。


そして、部屋を見回し終えた慶介は翔太を見た。


先ほどまでの笑顔とは変わり、真剣な表情で慶介を見つめる翔太。


そのまっすぐな視線に、慶介は戸惑い目が泳ぐ。


翔太は優しく慶介の名前を囁き、視線を合わせる。


先ほどより、二人の顔の距離は近づいている。


しばし、沈黙のまま見つめ合う。


なぜか視線を逸らす事は出来ない。


「ねえ、今日なんで泊まりに来ないとか言ったの?」


見つめている事に照れを感じ、たまらず慶介が口を開いた。


すると翔太は含み笑いをし、更に顔を近づける。


呼吸する翔太の吐息が唇に触れるたびに、鳥肌がたつ。


そして、唇が触れるか触れないかの瀬戸際で囁いた。


「分かるでしょ?」


その言葉に慶介はすべてを理解し、恥ずかしそうに笑うと、瞳を閉じ翔太を待つ。


触れた唇から、互いの体温が伝わる。


触れるだけだったそれは、段々と深いものへと変わっていく。


その甘く痺れる感覚に慶介は身を委ねる。


翔太はゆっくりと慶介を押し倒していった。


慶介が待っていた温もりがそこにあった。


まるで、この世に自分と翔太しかいないような感覚。


体中で翔太を感じている。


熱い濡れた吐息が部屋中に響いていた。
< 86 / 214 >

この作品をシェア

pagetop