Dear・・・

朝[Keisuke.side]

朝日がカーテンの隙間から差込み、ベッドで抱き合いながら眠る二人を照らす。


翔太は、眩しそうに瞳を開け、大きく伸びをし、そして、起き上がる。


だが、それを慶介は引き止めた。


目を閉じたまま手探りで翔太を自分の方へと抱き寄せる。


翔太はあっさりと慶介の元へと倒れこみ、慶介を抱きしめる。


当然、一糸まとわぬ二人だから、互いの体温が直接的に伝わる。


程よい温もりに酔いしれ、翔太は再び瞳を閉じた。


まるで、この世の中には慶介と翔太、二人しかいないのではないかと思わせるような甘い感覚。


幸せと言う言葉に、二人は包まれていた。


「翔太に慶介君。もう朝よ。朝ごはんも出来てるし降りてらっしゃい」


二回ドアをノックされた後、母の声がした。


二人は驚き、勢い良く飛び起きた。


だが、母の入ってくる気配はない。


「翔太、慶介君。起きてる?」


反応のない二人に再度呼びかける。


「ああ、起きてるよ。着替えて行くから」


翔太の言葉を聞くと、母はその場を去っていった。


階段を下りていく音が聞こえる。


慶介と翔太は顔を見合わせ、ベッドに倒れ込みながら大笑いをした。


「翔太、焦りすぎだから。」


「慶介こそ、勢い良く起き上がりすぎだから。」


そして、再び笑いあう。


その笑いが段々と収まっていく。


翔太は、不意に真剣な眼差しで慶介を見つめた。


いきなりの事に、慶介は驚きの表情を浮かべる。


と、その慶介に翔太は笑顔で軽くキスをした。


その行動に、さらに慶介は驚く。


「慶介、間抜け面だよ」


悪戯な笑みを浮かべて言う翔太。


無性に恥ずかしくなった慶介は翔太に抱きつき、顔を埋める。


翔太は優しく慶介の頭を撫でる。


この時ばかりは、どちらが年上かなどは関係ない。


甘い空気に酔いしれる。
< 88 / 214 >

この作品をシェア

pagetop