Dear・・・
件名:どうだった?
本文:翔君とのセックスはうまくいったか?






送信者名は治。


翔太には聞き覚えのない名前だ。


しかし、治という相手は自分の事を知っている。


それ以上に、昨夜からの翔太と慶介の二人しか知らないはずの行為さえ、治という人物は知っている。


誰なのであろうか。


慶介とはどんな関係なのであろうか。


疑問と共に、顔も知らぬこの治という人物へ、翔太は深い怒りを感じていた。


「メールなんだって?」


目を閉じたままの慶介が尋ねた。


「迷惑メール」


平静を装いたいも動揺は隠しきれない。


下手な発言をしないように、翔太は一言だけ素っ気無く返した。


慶介の様子を伺う。


慶介は翔太の変化に気づかない。


気づかないのを良いことに、翔太は勝手に慶介の携帯電話からメールを打ち始めた。


何でも無い割に、未だにメールの打つ音が聞こえる。

当然、慶介は自分の携帯からメールを打っているなど微塵も思わない。


「誰にメール打ってんの?」


薄っすらと目を開けながら、慶介が尋ねた。
< 90 / 214 >

この作品をシェア

pagetop