Dear・・・
治はベッドに腰掛け、ベルトを締める。


と、貴之が前に立ち右手を差し出した。


治は何か、と貴之を見上げる。


「金」


たった一言。


治は小さくため息をつき、財布から四万円を差し出した。


それを貴之は奪い取るように受け取り、手際よく服を着ていく。


治は頭を抱え貴之を見た。


「もし、俺が金を渡さなかったら?」


「はあ?金なかったらてめぇみたいなオッサンとヤったりしないから」


鼻で笑い、貴之は治を置いてさっさと部屋を出て行った。


一人部屋に残された治は、激しい空虚感に胸を痛め、しばしそこを動けずにいた。
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