臆病者の逃走劇.
「……え?」
予想外すぎて。
突然すぎて。
まともに言葉も返せない私が漏らしたのは、かすれた声。
「山本さん、だよな?」
聞きながらも、ちっとも疑問に思ってるような、そんな顔じゃない。
念のため確認しておく、ような。
私のことを知っていたような東条くんに、驚きを通り越して、戸惑いを隠せない。
「…え、あ、はい」
「俺のこと、分かる?」
「あ、うん、えっと……一応」
一応ってなんだ。
え、……え!?
ここにきてようやく頭が少しずつ稼働をし始めてくれる。
けれどそれでもさっぱり分からない。
……なにこの今の状況は!?