臆病者の逃走劇.


私の少し後ろから、声をかけようとしていた美緒ちゃんはしっかりと朝の一部始終を見ていたらしい。


「何がどうなってんの!?」

「なんで何も言わずに逃げたの!?」

「…っていうか、馬鹿!?」



一人誰もいない裏庭に逃げていた私を追いかけて、美緒ちゃんは、私に詰め寄り声を荒げた。

馬鹿だなんて、そんなの、自分が一番分かってるよ~~!


膝を抱えて、すっかり弱り切った私を見て、美緒ちゃんは呆れてはあーっと長いため息をついた。



「何も言わずに逃げちゃったら、これからどうすればいいのか余計分からなくなるじゃない」

「だって。突然すぎて。…なんで私?」

「知らないわよ」

「だって話したことなんて全くないんだよ」



あの、短い時間を除いて。



「なんで私?」

「知らないってば!なんならあたしも不思議でしょうがないわよ!」



東条くんなら女の子は選びたい放題、よりどりみどりなのにって。

それ暗に私のことけなしてるよね美緒ちゃん。

どうせブスですよ。ふんだ。


心がひねくれてしまっている今の私は、美緒ちゃんの冗談もがっつり間に受けて拗ねる。


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