臆病者の逃走劇.
あの冬の短い時間だって。
もしきっかけになる接点があると言うのなら、あの時間しか考えられないけれど。
本当に、本当に、ちっぽけな会話しかしてないんだ。
なにも運命的なことなんて、あの時間にはなかった。
どうして?
どうして?
東条くんの冗談?
罰ゲーム?
…だってそれしか考えられない。
「う~~~」
膝に顔をうずめて考え込む私に、美緒ちゃんはまたため息をついて。
「…とにかく今は、教室、いこ。授業始まっちゃうし」
「うーん…」
「今は考えても答えなんて出ないでしょ。いっかい冷静になろ」
「うん、…そうだね、」
たしかに今は、このまま答えは見つかりそうにない。
…なにが答えかだなんて、分からないけれど。