臆病者の逃走劇.
英語が、ついていけないなあ。
これは1年の時から感じていたことだった。
英語に関しては、学ぶ文法が増えて、2年になってもっと難しくなっていく一方。
まあ数学に関しても言えることだけれど。
どうやら私はどちらかと言うと理系らしい。
「………」
チク、 タク、
息をひそめたような、ひそかなざわめきと、時計の針の音。
静かすぎないけれど決してさわがしくないこの空間が、とても居心地がよい。
窓から指す夕日に、そっと目を細めた。
あの冬の日は、たしかもっと、暗くなってた。
『ありがとう』
どうして身近でささやかな言葉に。
あんなにも惹かれたのか。
『……助かった、』
「東条、くん」
ふと暗くなった視界に。
光をさえぎっていたのは、東条くん本人だった。