臆病者の逃走劇.



英語が、ついていけないなあ。

これは1年の時から感じていたことだった。


英語に関しては、学ぶ文法が増えて、2年になってもっと難しくなっていく一方。

まあ数学に関しても言えることだけれど。


どうやら私はどちらかと言うと理系らしい。



「………」



チク、 タク、


息をひそめたような、ひそかなざわめきと、時計の針の音。

静かすぎないけれど決してさわがしくないこの空間が、とても居心地がよい。


窓から指す夕日に、そっと目を細めた。



あの冬の日は、たしかもっと、暗くなってた。



『ありがとう』



どうして身近でささやかな言葉に。

あんなにも惹かれたのか。



『……助かった、』



「東条、くん」



ふと暗くなった視界に。

光をさえぎっていたのは、東条くん本人だった。


< 19 / 26 >

この作品をシェア

pagetop