不埒な恋慕ごと。
 同じクラスの琴吹 ほとり(ことぶき ほとり)は、孝輔のことが好きだと、学校中の誰もが知っていた。


多分、……彼女は今、自分がどんな顔をしているのか、自分自身気がついていない。


初めて同じクラスになって、彼女のことを知らないうちはわざとああやって、わたしを威嚇しているんだと思っていた。


……だけど、暫く見ているうちに、名前にとても似合った、自然と醸し出ているふわふわとした柔らかな雰囲気、すこし天然で、人の悪口なんてほとんど口にしない彼女を見て、


あの子が、わたしにあの鋭い瞳を向けるのはおかしいと感じた。


彼女は無意識だ。


ある日やっと気がついて、なるべくわたしは気にしないようにしていた。


彼女が孝輔を好きなことが知れ渡っているのは、自身は無意識でも、孝輔と話す時の、緊張からかよくうわずる声、おどおどとした態度、


ひと目でわかる、初々しすぎる反応のせいだった。


やがてそれを知った周りのみんなは彼女を応援していて、孝輔と仲の良いわたしはクラスの人たちからもあまり良いように思われていなかった。
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