不埒な恋慕ごと。
　クラスの男子とイチャイチャし始めた孝輔を無視して、自席へと向かうと、分け隔てのない笑顔に切り替わった琴吹ほとりちゃんが、わたしの元へと駆け寄ってきた。


「おはよう、寧々ちゃん。」

「……おはよう。」


正直わたしは、……この子が苦手だ。


孝輔とのことでこの子自身、正直わたしをよく思っていないことは別にいい。


……ただきっと、この子は１年前のことでわたしにどこか気を遣って近寄ってきているような気がする。


クラスにいくつかある女子グループのひとつに所属している彼女は、どこのグループにも入らないわたしを、必死でそこへと入れようとしているような行為が度々見られた。


実際、群れないわたしは孝輔とのことで言われ放題だったし、琴吹ほとりちゃんのグループ内で、わたしの悪口が言われていたのも聞いたことがある。


それなのにわざわざ、群れる気なんてわたしにはなかった。


別に気なんて遣わなくていいのに、……ありがたいけれど、少し心苦しい。


ふと、窓際に目を向けると、グラウンドの隅っこにぽつぽつと紫陽花が咲いていた。


１年前のただ楽しかった日々を思い返してみると、……やっぱり少し寂しさを感じた。
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