不埒な恋慕ごと。
 放課後になって、いつものスーパーへと向かおうと、教室をあとにすると、


下足室で靴を履き替えるわたしの視界に、桃色のカーディガンと、ふわふわとした長いパーマの髪が入ってきた。


……またか。


ひっそりとため息をつき、顔を上げると、童顔の彼女の顔が見えてくる。


……琴吹ほとりちゃんだ。


「寧々ちゃん。一緒にカラオケ、……」

「大丈夫。……ありがとう。」


愛想笑いを浮かべ、さらりと躱し、わたしは目の前に立ちはだかるあっさりと折れてしまいそうなくらいに細い彼女の横をすり抜け、通り過ぎる。


はやく、諦めてくれればいいのに。


これも、いつものことだった。


琴吹ほとりちゃんは、どうしてあんなに気を遣うのか、わたしにはさっぱりわからなかった。


学校を出て、家とは反対の方向に5分ほど歩くと、毎日のように通うスーパーが見えてくる。


明日は蒼生くんがカレーが食べたいと言っていたから、玉ねぎと、ジャガイモと、ニンジンは、嫌いだって言ってたっけ……。


頭の中にメモをしていると、カレーの匂いを思い出し、わたしのお腹がきゅるきゅると音を立てた。


その間も、蒼生くんが今日は飲み会だということが引っかかっていた。
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