不埒な恋慕ごと。
第1章
静かなエレベーターの中、わたしは1人懐かしい歌を口ずさむ。
曲に乗って踵を上下させると、持っていたスーパーの袋がガサガサと音をたてた。
やがてエレベーターが目的の階に到着し、部屋に向かうと、わたしの部屋の前に怪しい人影が見えた。
思わず足を止めると、途切れた足音に反応した彼は振り向いた。
「……おかえり、寧々(ねね)ちゃん。今日は何作る?」
子供のように無邪気に笑う笹谷 蒼生(ささや あおい)くんだけれど、やっている行為はまるでストーカーだ。
わたしは盛大にため息をつき、じっとりと蒼生くんを睨んだ。
「……蒼生くん、何度も言うけど家の前で待ち伏せなんてしないでよ。」
「だって寧々ちゃんってば、俺が来ないと呼びに来てくれないじゃん。
独り占めしようなんてそうはいかないよ。もうコンビニ弁当なんか食べられないんだから。」
蒼生くんはそう、まるで子供のように唇をとがらせた。
渋々、といった形で扉を開けたけれど、本当はこの時間が、わたしにとって毎日楽しみで仕方がなかった。
先に靴を脱いで廊下を進もうとすると、後ろでまだ靴を履いたままの蒼生くんが、突然わたしの手を掴んだ。
「寧々ちゃん、いい加減素直になりなよ。いっつもちゃーんと材料2人分用意してるくせにさ。」
「……なっ、違うもん!今度使うんだもん。」
核心を突かれたわたしは、蒼生くんからぷいと顔を逸らした。
蒼生くんはくす、といたずらっぽく笑っている。
……どうやらこの人には、全てお見通しだったらしい。
知らないふり、してくれたっていいのに。
曲に乗って踵を上下させると、持っていたスーパーの袋がガサガサと音をたてた。
やがてエレベーターが目的の階に到着し、部屋に向かうと、わたしの部屋の前に怪しい人影が見えた。
思わず足を止めると、途切れた足音に反応した彼は振り向いた。
「……おかえり、寧々(ねね)ちゃん。今日は何作る?」
子供のように無邪気に笑う笹谷 蒼生(ささや あおい)くんだけれど、やっている行為はまるでストーカーだ。
わたしは盛大にため息をつき、じっとりと蒼生くんを睨んだ。
「……蒼生くん、何度も言うけど家の前で待ち伏せなんてしないでよ。」
「だって寧々ちゃんってば、俺が来ないと呼びに来てくれないじゃん。
独り占めしようなんてそうはいかないよ。もうコンビニ弁当なんか食べられないんだから。」
蒼生くんはそう、まるで子供のように唇をとがらせた。
渋々、といった形で扉を開けたけれど、本当はこの時間が、わたしにとって毎日楽しみで仕方がなかった。
先に靴を脱いで廊下を進もうとすると、後ろでまだ靴を履いたままの蒼生くんが、突然わたしの手を掴んだ。
「寧々ちゃん、いい加減素直になりなよ。いっつもちゃーんと材料2人分用意してるくせにさ。」
「……なっ、違うもん!今度使うんだもん。」
核心を突かれたわたしは、蒼生くんからぷいと顔を逸らした。
蒼生くんはくす、といたずらっぽく笑っている。
……どうやらこの人には、全てお見通しだったらしい。
知らないふり、してくれたっていいのに。