不埒な恋慕ごと。
 わたしがひとり項垂れていると、じっと見ていた自分の爪先の前に、綺麗なスニーカーが現れて、


すぐに顔を上げると、端正な顔がわたしを見つめていた。


疑問に思って見つめ返すと、朝霧くんは言った。


「寧々ちゃんも、どう?」

「え……。」


勝手に飛び出た変な声を恥ずかしく思いながらも、恐る恐る朝霧くんの後ろにいる菜々に目配せをすると、口を大きくあけて『こ』『と』『わ』『れ』と伝えてきた。


しかし、咄嗟にいい言い訳は出て来ず、


「ごめん、夕飯の準備が……。」


出て来たのは、午後2時の今にはとても苦しい言い訳だった。


「途中までで、いいから。俺だけじゃ、正直うまく教えられる自信ないし。」

「……でも、」


言い返せなくなって口ごもり、菜々にまた視線を送ると、大きなため息をつく呆れた表情が目に入った。


でも、このほうが側で見守れるし、わたしとしてはよかったかも……。


そうして3人で、昨日と同じ図書館に向かうことになった。
< 28 / 42 >

この作品をシェア

pagetop