不埒な恋慕ごと。
 朝霧くんはそのままわたし達の元へ来て言った。


「ごめん、寧々ちゃん。今わかんない所あってさ、一緒にやってもいい?」

「ダメ。」


わたしが『菜々は大丈夫なの?』と言おうとしたところで、孝輔が間に入った。


「俺、寧々ちゃんに聞いたんだけど。」


朝霧くんは爽やかスマイルを崩さないまま、孝輔に視線を向けたけれど、それが逆に不自然で恐ろしくも見えた。


「俺が小日向とやってんだから俺の許可も必要だろ。で、ダメ。俺は嫌だ。」


何故か敵意むき出しの孝輔に、わたしは弱々しくまあまあ、と宥めてみたが、効果はない。


孝輔の睨みつけるような目はわたしなんかを映してはいなかった。


「じゃあ望月クン、なんでダメなのか理由言ってくれる?10文字以内で。」


朝霧くんは尚も笑っているが、その笑顔は怒気を帯びていた。


「俺、オマエ、キライ。はい10文字。」

「……」


まるで小学生のような孝輔に、朝霧くんは呆れたように言葉を無くしていた。


やがて朝霧くんは大きなため息を漏らし、菜々の元へと戻って行ってしまった。


「へっへーん、撃退。ざまあみろ。」

「……小学生。」
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