不埒な恋慕ごと。
「ていうかさ、なんなの?」


孝輔は、突然、ペンをサラサラと動かしながら言った。


「なにが?」


なんのことかピンとこなかったわたしは、同じように目線は問題に向けたまま口にする。


「昨日から聞こうと思ってたけど、『寧々ちゃん』って。」

「う、……断る理由が見つかりませんでした。」


向かいで、孝輔が大きなため息をつくのがわかった。


「アホか。キモイからやだ、とか言えばいいじゃん。」

「なっ、そんなこと、言えない……。」

「まー、お前だもんな。」

「どういう意味?」


思わず力が入って、ノートに滑らせていたシャーペンの芯が、パキ、と折れる。


すると孝輔はあはは、と笑い、


「お前の性格上、そういう暴言は吐けないっていい意味じゃん。」


さらりと言い放った。


「……」


わたしは何だか照れてなんの反応も返せずに、芯の出てこなくなったシャーペンを何度もカチカチとノックしていた。


そして孝輔は、特に気にした様子もなく、また話を振ってくる。


「小日向さー、高校どこ行くか決めてる?」
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