不埒な恋慕ごと。
「え、西高にしようかなー、とは思ってるけど。」


何気なく答えると、孝輔が突然ペンを置いた。


「え、西?お前なら、北でも他の私立でも行けんじゃないの?」


思ったより大きな反応に、わたしも顔をあげて、驚いたような顔をする孝輔を見る。


この地域では近くに私立高校はなく、大体の人が公立高校を選択していた。


「うーん、でも家から徒歩10分もかからないし、あそこ、すぐそこにスーパーあるでしょ?便利だからいいかなって。」

「……へぇ。」


孝輔は相変わらずのぽかん顔で、そっかぁ、西かぁ、とひとり呟いている。


「孝輔は?」

「……うん、俺も希望は西だけど。」

「そっか、同じか。なんかちょっと嬉しいね。」


わたしがくす、と笑うと、孝輔は小さくおー、と言いながら、また勉強を再開した。


「……朝霧は、多分北にでも行くんだろうな。」


そしてふと、朝霧くんに視線を置いた孝輔が言う。


「?そうだね。」


わたしも菜々と一緒に勉強する彼を見つめながら、そう呟いた。
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