不埒な恋慕ごと。
 翌日から、体育祭の練習のため、体育の授業は、全クラス合同ですることになった。


周りのみんなは、個人種目の練習や、リレーなどをそれぞれ頑張っている中、わたしはぽつんとよれよれになった縄跳びを手に、ため息をつく。


運動オンチのために用意されたようなこの競技。


去年の失態は緊張のせいだったし、……練習したってなあ。


そう思いながら縄跳びを綺麗に纏めていると、少し離れた所から黄色い声が聞こえ、わたしはそちらに目を向ける。


……あ、あれは。


爽やかにグラウンドを独走していたのは、アンカーのタスキを身につけた、朝霧くんだった。


未だにわいわいと騒いでいるのは、その人にうっとりとした視線を送る女の子たちで。


2位3位、と抜かしては抜かされての勝負をしている他のクラスを置いて、大きく差をつけた状態で朝霧くんは余裕の1位でゴールテープを切った。


女の子たちは拍手をしながら、キャーキャーと更に騒ぎ立てる。


キラキラと眩しすぎるくらいに輝く姿を見て、わたしは手元の縄跳びに視線を移し、またため息をついた。
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