不埒な恋慕ごと。
 助走をつけ、バトンを受け取った菜々は、ギリギリ1位の状態で、一気に走り始めた。


そして2位との差を、ぐんぐんと広げてゆく。


菜々と同じクラスのみんなも、菜々ー!!と大きく叫んでいる。


隣の朝霧くんが気になって、声援は送れなかったわたしも、思わずすごい、と呟いた。


やがて菜々は見事1位をキープして、大きくバンザイのポーズをとりながら、ゴールテープを切った。


興奮した様子で、菜々のクラスのみんなは菜々に駆け寄る。


すると、わたしの隣に目を向けた菜々は、はにかみながらそちらに手を振った。


朝霧くんも、爽やかに笑いながら、手を振り返していた。


……そういえば、朝霧くんと菜々は同じクラスだから、リレーの1位は男女共に取られたのか。


小さくため息をつくと、隣から、あ、と言う声が聞こえた。


「寧々ちゃんは、何出るの?」

「……縄跳び競争。」


朝霧くんはわたしの答えに、一瞬空を見て、


「あ、……もしかして、あの?」


おずおずとあくまでも気兼ねしながらそう言った。
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