不埒な恋慕ごと。
 翌朝学校へ向かうため、準備を済ませて部屋を飛び出すと、


「おはよう寧々ちゃん。」


不意に左隣から、聞き覚えのある声が聞こえて、わたしはその方向を向く。


見れば、蒼生くんが隣の部屋から出てきて、扉の鍵をかけているところだった。


「おはよう……。」


わたしの胸が飛び跳ねて、慌てて準備をしたことにより、乱れた髪を手ぐしで整える。


わたしがエレベーターの方へ足を進めると、後ろからついて来ていた蒼生くんが、あっ、と声をあげた。


「どうしたの?」


首だけ振り返り、何か思い立ったような顔をする蒼生くんを見る。


「寧々ちゃん、今日は俺の材料買わなくていいよ。俺、昨日あのあと先輩に飲み会に誘われちゃって。」

「……ん、わかった。」


……飲み会。


エレベーターに先に乗り込み、わたしはひとり、眉を顰めた。
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