不埒な恋慕ごと。
「よー、小日向。おはよう。」


少しの間蒼生くんの背中を見つめ、学校の方へ歩みを進めると、毎朝のように聞く声と共に、肩を叩かれた。


正体はわかっていながらも振り返れば、八重歯を見せて笑う望月 孝輔(もちづき こうすけ)の姿があった。


「孝輔、おはよう。」


軽く微笑んで挨拶を返すと、孝輔が少し顔を顰め、突然わたしの額に手を当てた。


「……?」

「……熱?なんか顔赤いけど。」

「え……。ち、違う、全然元気!」


誤魔化すように慌てて離れると、そ?と言いながら、孝輔はまだ疑いの眼差しをわたしに向けている。


孝輔に突っ込まれたせいで、さっきのキスを思い出し、わたしの顔にまたさっきの熱が蘇った。


……蒼生くんのせいだ。


それから孝輔と一緒に5分ほど歩いて、同じ学校に到着した。


下足室を出て、右に曲がると、3年1組の室名札が見えてきて、わたしと孝輔は同時にその教室へと入る。


そして一緒に登校してきたわたしたちを、じっとりと睨みつける人物がいつものように教室の端っこに居るのを感じた。


隣にいる孝輔は、ただ周りに笑顔を振り撒いていて、気がついていない様子だった。
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