君のことが好きだから
息が止まると思った。
鼓動がうるさいくらい早くって、手のひらが緊張のあまり汗ばむ。
顔はどんどん暑くなるのに、足の先は冷たくなる。
目をつぶってしまってるから、彼がどんな顔をしてるのかは分からない。
一秒が長く感じた時、沈黙を先に破ったのは圭一くんだった。
「…好きになってくれてありがとう。」
圭一くんを見ると少し赤くなった顔。
こんな顔、初めて見た。
「でも、ごめん。付き合ってる人がいる。だから篠崎のキモチに応えられない。」
立ち去ろうとした時、私は無意識に大声で話した。
「私っ、いつか圭一くんが後悔するような、素敵な女の人になるからっ!」
振り返った彼は私の大好きな笑顔を見せると
「がんばれ」
と一言いって出て行った。
不思議と後悔はなかった。
振られてしまったものの、菜桜が羨ましいとか妬ましいという気持ちはなく、
むしろスッキリしてた。
でも、やっぱり圭一くんのことが好きなのは変わらなくて。
だから、
「菜桜と圭一くんが幸せになるように応援してる、ね。」
こんなのキレイ事かもしれないけど。
君のことが好きだから、私はあなたの幸せを願います。
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