獣耳彼氏
何度も会っていれば慣れるもので。
「お待たせしました。秋月くん」
「…ああ」
秋月が待っていてくれることも、今になっては当たり前のこととなってきている。
待つための定位置となり始めた、校門の柱に背を預け立っている秋月くんの元へ駆け寄る。
最近では帰り際、部長の姿を一切見ることもなくなって。
本当に平和な日々が続いている。
部長には申し訳ないけど、私にとっては彼の存在が大きなストレスにもなっていたのは事実だから。
部長が関わってこなくなって、そのストレスも解消されつつある。
とても調子がいい。
秋月くんと出会ってから、分からないことや緊張することが増えたけど。
そんなのは気にならないほどに今の私は今を楽しんでいる。
「秋月くん。耳…」
「却下」
耳触らせてくださいと言おうとした瞬間に即答、拒絶される。
隙を見て、獣耳を触ろうにも妖狐の姿になることがないから、それも出来ない。
あの、初めて獣耳を触ってからは一度も妖狐の姿を見ていない。
追われていると言っていたけど、それっきり。
追ってきていたもが何なのかも分からない。
それはそれで、凄く怖いところもあるけれど、秋月くんがあの日の帰り際大丈夫だと言っていたからそれを信じている。