獣耳彼氏
もし仮に変質者だったとしても、自分で退治出来るのもあるし。
獣耳に巡り合う機会が全くない今。
チャンスを得るためにも、触らせて言ってみても当たり前に拒否される。
「なんで、いつも駄目って言うんですか?」
そう、いつ聞いても嫌だからの一点張り。
彼の妖狐の姿を見たのはあの二回のみ。
きっと他の人が秋月くんのような存在と遭遇したら、もう関わらないようにするのだろうけど。
私は違う。
彼の本当の姿で接してきて欲しい。そう思っている。
嘘偽りのない姿で。
人の姿が嘘とかそういう訳ではないけど、できたら。
私の前でだけでも、彼が自由な姿で居て欲しい。
そう思うのはやはり、私が秋月くんを好きだからだろうか。
秋月くんの横で彼を見上げる。
端正な顔が視界に映る。
かっこいい。秋月くんはかっこいい。
誰が見てもそう思うだろう彼だけど。
私が彼に惹かれるようになったきっかけはなんなのだろうか。
彼の顔が忘れられなかったのは確かだけど。そうじゃない。
顔ではないきっかけが何かあったはずなのだけど、どれがそれなのか私には分からない。
彼と接していく内に、気づいたら好きになっていた。
今まで恋というものをしたことがない私だけど、恋って気づいたらなっているものだと思う。
少なくとも私は。