獣耳彼氏
不審者のごとく、背を丸め冷蔵庫の中を漁っているのは…
「お兄ちゃん。何してるの?」
「おわっ!なんだ、真琴か…お、おはよう」
コップを片手に振り返ったお兄ちゃん。
凄く驚いた様子なのは放っておいて。
なんだ、お茶を飲もうとしていただけか。
透明なコップになみなみと注がれているお茶を見て状況を把握する。
本当に不審者だったら退治してたところだ。
あ、ちょうどいいじゃない。
「私にも頂戴、お茶」
嫌とは言わせない。微笑みを携えて。
面倒臭そうに一瞬顔を顰めたのを私は見逃さない。
見逃しはしないけど、今は見なかったことにしてあげる。
すぐに私の分を用意してくれたから。
まあ、見なかったことにはするけど、忘れるわけではないから。
今度、組手をするとき、いつも以上にキツい技をかけることにしよう。
よかったね、今じゃなくて。朝から痛い技をかけられずにすんで。
心の中でほくそ笑む。
そんなことを考えているとはつゆ知らずなお兄ちゃんから受け取ったお茶をコクリと一口喉を通す。
冷えたお茶が寝起きの体に染み渡る。