獣耳彼氏
ジッとその塀を眺めていた。
その時、塀に終わりが見えた。
それは、敷地の中に入るための門で恭しく扉が閉じられていた。
瓦屋根の感じから、昔ながらの古さを少し感じたが、この門は少し新しい感じがする。
木で作られているのになんだろう。汚れていないからかな。
思わず足を止めてマジマジとその門を見てしまっていた。
趣があるというか、とりあえず凄い家だという印象だ。
「あ…」
その時、おもむろに門が動き出した。
その尊厳さからは思いもよらない、軽やかな動きで門は開く。
誰か出てくる。思った時には遅かった。
門をくぐって出てきた人物に目を奪われる。
色素の薄い長い髪を結い上げ後ろに流し。
その顔の小ささからは考えられないほどの大きな瞳。
すらりと伸びた手足がそのスタイルのよさを物語っている。
美人。
その一言が似合う女性。
ふと、その彼女と目が合ってしまった。
よく見ればつり目がちの大きな瞳がそこにあった。
さらりとした長い髪が風に揺れる。
この家の住人だとしたら、どれだけ違和感のないことか。
色素の薄い髪の毛だけど、その立ち居振る舞いはまるで大和撫子のよう。
そんな彼女の後ろからもう一つの人影が現れた。