獣耳彼氏
真実は直ぐに
ふとドタバタと慌てている足音が聞こえてきた。
次の瞬間には門が開け放たれ人が出てきただろう気配が感じ取れた。
「何、二人して置いて行ってんだよ!」
ん?聞き慣れた声。今朝も聞いた声音。
顔を上げれば門の所に息を切らした人が居る。
見たことのある立ち姿。
「お兄ちゃん…?」
ぽそりと呟けばその人が顔を上げ、こちらを振り見る。
情けなく垂れた目が印象的な幸薄そうな顔立ち。
「真琴!?なんでここに!」
やっぱりお兄ちゃんだ。
お兄ちゃんが目の前に聳える豪邸から出てきたことに少なからず驚く。
何、何なの。秋月くんにお兄ちゃん、そして綺麗な女の人。
一体、どんな組み合わせか。
「お兄ちゃんこそ、どうして!」
とりあえず、分からないことだらけ。
「凌も知っているの?彼女のこと」
「え、あうん。だって妹だし。ってか、もって?」
左腕を持ち上げ横髪を耳にかける。
その仕草がとても妖艶でドキリとする。
女性が一思案巡らすと踵を返した。出てきた所へと戻る。
「とりあえず、一回戻るわ。貴女も中に入って」
私に視線を送り門を開け中へと姿を消した。
それに続いてお兄ちゃんもチラリとこちらを見ると門を潜る。
それも、当然の如く。
出てきた時と同じように慣れた様子で中に入って行った。