獣耳彼氏
中に入るとそこには、広い土地が眼前に広がった。
純和風な平屋が目に入る。
玄関だろうそこには、秋月くんたちが私を待っている。
変にキョロキョロしたら失礼になるだろうし。
珍しいそこをジックリと見てみたい気もするけど、真っ直ぐ前を向いて彼らの元へと急いだ。
「す、すみません」
遅れてしまって待たせたことに対して謝罪する。
自分が一方的に悪いとは思わないけど。
急に入ってと言われてもそりゃ気後れするに決まっているもん。
それでも、最低限嫌な人だとは思われないためにも謝罪した。
秋月くんや彼女に。
「じゃあ、こっち来て」
「え?中じゃないの?」
彼女が玄関から庭だろう方へと歩き出したことにお兄ちゃんが口を挟む。
それには答えずそのまま歩き続ける彼女。
隣を歩くお兄ちゃんの背中が心做しかしょんぼりしているように見えたのは気のせいか。
なんなのだろう、あの二人の関係は。
嫌な予想だけど、あの綺麗な女性は秋月くんの彼女っぽいし。
どこからどう見てもお似合いのカップル。
二人が並んでいる姿を見たら、十人中十人がカップルだと思うし振り返るだろう。
美男美女カップル。
そんなの負けでしかないじゃない。
少し前を歩く秋月くんの後ろ姿がとても遠くに感じた。