獣耳彼氏
「マコト、だったわね。龍宮 司(タツノミヤ ツカサ)です。凌の妹でいいのよね?」
「あ、はい。私は水嶋真琴、です」
そう答えた私だったけど、あることに気づいた。
さっきもだったけど、司さんはお兄ちゃんのこと凌って呼び捨てで呼んでいる。
秋月くんのことは秋。
特に意味はないのかもしれないけど、少し気になるのはなぜ。
その呼び方の距離感の違いなのか。
愛称で呼ぶのと呼び捨てで呼ぶ。
どちらが近いしい関係なのかは、人それぞれだ。
司さんにとっての近い関係性はどちらなのか。
「真琴はどうしてここに?」
お兄ちゃんが私を見る。
朝、出かけて行った時の格好のままのお兄ちゃん。
バスケの練習をしに行くと言っていた割には、運動するような動きやすい服装でないことに今更ながら気づいた。
「私は散歩してて、たまたまここを見つけたんだけど…そういう、お兄ちゃんこそ!」
こんな豪邸から出て来るなんて何事。
しかも、秋月くんと美人な司さんも一緒だし。
普通じゃあり得ないことだ。
ジト目でお兄ちゃんを見つめる。
泳ぐ視線の先には司さんが居る。
「それは、あ。あれだよ。バスケの練習…」
「嘘」
そんな挙動不審で、嘘だって言っているようなものだ。