獣耳彼氏
というか。
「お兄ちゃんも知ってるの?秋月くんのこと、なんで」
「う…それは…」
そうだよ。まず、お兄ちゃんがここに居る理由は何。
秋月くんと一緒に居る理由は何。
司さんと一緒に居る理由は何。
いくつもの何が私の中を埋め尽くす。
一向に喋る気配のないお兄ちゃんにどこからかため息が聞こえてきた。
「凌が話さないのなら、私が説明するわ」
「えっ!待って、司…」
「遅かれ早かれ、いつかは彼女が知ることよ。諦めなさい」
バサリと切り捨てる司さんにお兄ちゃんはあんぐりと口を開け項垂れる。
私を真っ直ぐに見つめる視線とぶつかった。
漆黒の瞳がとても印象的だ。
瞳は黒なのに髪の毛は色素の薄い茶色。
不思議な色合いだ。
純日本人かと思えば、ハーフのような印象も受ける。
「まず初めに。秋と私は何もないから安心して」
「「えっ!?」」
司さんの言葉に驚く。
その時、溢れた声が誰かのとハモる。
誰かなんて少し考えれば分かる。お兄ちゃんだ。
司さんがクスリと笑う。
「私の彼氏は凌だから」
その言葉を理解するのに時間がかかった。
それを理解した瞬間叫ばずにはいられない。
「えーっ!!」
大きな声がこの広い道場内に響き渡った。