獣耳彼氏
彼と彼女の秘密
この目の前に立つ綺麗な女性が秋月くんではなくこの。
この情けない良いところなんてあるのか分からないような、幸薄そうなお兄ちゃんの彼女…?
嘘でしょ!絶対、嘘!ありえないよ。
司さんがお兄ちゃんの彼女なんて。
「お兄ちゃん!司さんをどう脅したの!?」
酷いわ!お兄ちゃんがこんな酷い人間だとは思わなかった。
お兄ちゃんを睨みつける。見損なったわ…
「人聞きの悪い!何、誤解しているのか知らないけど、俺は一切脅してないからな!」
逆に俺が脅されたようなもの…
なにか、最後に呟いていたようだけど、それは私の耳には届かなかった。
秋月くんの彼女が司さんじゃないということは、内心喜ばしいことだけど。
逆に司さんの彼氏が私のお兄ちゃんだというのは、やはり疑ってしまうところだと思う。
それ程まで、言ってしまうとお兄ちゃんと司さん不釣合い。
二人が並んで歩いている様子を見ても違和感しか抱かないだろう。
「真琴。今、失礼なこと考えているだろう…」
「え?なんのこと?」
まさか、お兄ちゃんに考えていることがバレるなんて。
油断した。気をつけないと。
「仲が良いのね」
司さんが私たち二人を見やる。
女の私でさえドキッとしてしまう、綺麗な微笑みを添えて。