獣耳彼氏
ふわりと微かに風が吹くと光が収まる。
ゆっくりと瞬きを繰り返す。
強い光を浴びたことで、目の焦点を合わせるのが難しい。
瞬きをすることで、徐々に日常の明かりに目が慣れていく。
途端、目に飛び込んでくるある色。色鮮やかなその色。その体。
「ひあっ!」
広すぎる和室を埋め尽くすある物体。
緑だと思った色は、よくよく見てみれば宝石のような煌めくエメラルド色で。
その表面は硬そうなでも光沢のある鱗で覆われている。
司さんの横には大きな大きな顔。
立派な牙と風が吹いている訳ではないのに揺らめく鬣(タテガミ)。
鋭い双眼が私を見ている。
広いとはいえ、この部屋の中にその存在が納まっているのが不思議なくらい大きな龍がそこに現れたのだ。
これを目の前にして驚かない人はいないだろう。
「あ、あ、あ…あの」
「まずは一つ。凌が私と付き合うようになった大元の原因、龍のリョクよ」
龍もといリョク、さんが頷く。
その時、頷いた動きで風が送られてきたのは気のせいではないだろう。
大まかな説明を受けるとこうだ。