獣耳彼氏
お兄ちゃんが紙を秋月くんへと飛ばす。
それは、秋月くんを目掛けて飛び、目前に来た瞬間。
それは破裂音と共に爆発した。
爆発の衝撃で出た煙が秋月くんを包み込む。
それを待っていたのか、お兄ちゃんが秋月くんとの距離を一気に詰める。
腕を大きく振りかぶり、秋月くんにそれを振り下ろす。
体全体の捻りを加えたそれはまともに当たれば痛いものだろう。
が、その拳は空を切った。
「秋があなたを私たちの世界へ引き込んだから」
「司さんたちの世界、ですか…?」
「そう。彼らを見て分かるように人知を超えているでしょう?」
煙の中、姿を消した秋月くんを探す。
予想外だったのか、お兄ちゃんはお兄ちゃんで後ろへ跳躍すし構える。
その跳躍でさえ、人のそれを超えている。
バッとお兄ちゃんが背後を振り返る。
途端、再び紙を飛ばす。
それは、先ほどと同じように爆発した。
そこから顔の前で腕を交差させた秋月くんが姿を現わす。
腕の隙間から覗く金色の瞳が鋭く細められる。
「凌は何となく分かっていたのかもね…」
「何をですか?」
「凌程じゃないけど、真琴。あなたにも大きな霊力が秘められているわ」
再び、壁に打ち付けられたお兄ちゃんの体。
上手く避けきれず秋月くんの攻撃を受けたのだろう。