獣耳彼氏
「うぐっ…!」
「お兄ちゃん!?」
簀巻き状態となったお兄ちゃんの元へと慌てて駆け寄る。
首から下、全てを縛られた姿はまるで芋虫のよう。
身動きの取れない体を捩る姿もそれに見える原因だろう。
「凌。秋に当たっても仕方がないことでしょう」
足元に転がるお兄ちゃんを司さんは上から見下ろす。
お兄ちゃんの顔に彼女の影がさす。
しゃがみ込んだ私からは司さんがどんな表情をしているのか分からないけど。
恐らくは小さな子どもに言い聞かせるような声音、表情なのだろう。
「分かってる…頭では分かってるんだよ…けどっ!」
力が込められた叫び。
瞬間、お兄ちゃんを縛っていた縄が光となり霧散した。
司さんが驚愕に目を見開く。
そして、次お兄ちゃんの姿を見た時には秋月くんの胸ぐらを掴み上げていた。
それすらも、予想していたことなのか、秋月くんは一切の動揺を見せない。
「俺は秋月を許せない」
近い距離で睨み付けるお兄ちゃんの目を受け止める秋月くん。
パンッと服を掴んでいる手を払い退けると再びため息を吐いた。