獣耳彼氏
チラリと秋月くんの瞳が私を捉えた。
お兄ちゃんと争ったことで姿の変わった秋月くんの持つ金色の瞳が。
「お前、一人じゃ守りきれないくせいに…」
「はあ?」
呟いた言葉にお兄ちゃんが反応する。
眉間に皺を寄せもう一度掴みかからん勢いで。
しかし、それは秋月くんの思わぬ言葉に遮られる。
「マコトのこと、何も知らないお前に言われる筋合いはない。こいつが狙われていることにさえ気付いていないお前には。マコトは俺が守ってやってんだ。お前は龍宮のことだけ気にしてろ」
一気に吐き出した秋月くんはもう言うことはない。
そう言うかの如く、無言で道場から出て行った。
最後に私を見て。
「秋月くん!?」
彼の後を追おうと駆け出した所を誰かに腕を掴まれ止められた。
振り返ると司さんが私を引き止めていて、その少し後ろではお兄ちゃんが目を丸くさせ私を見ていた。
「秋のことは、また後から追えばいいわ。まずは、これよ」
視線でこれと言ったお兄ちゃんを示す。
一度俯き、そして顔を上げたお兄ちゃん。
苦しそうに眉が顰められているのはどうして。
悲しそうに目が細められているのはどうして。
「狙われているって、どういうことだ」
お兄ちゃんが呟く。