獣耳彼氏
「お兄ちゃんは何であんなにも怒っていたの?」
秋月くんと争い、許せないとまで言ったお兄ちゃん。
私が、彼らの不思議なことに関わってしまうようになったことを。
「えっ?あ、それは…」
「凌が今まで、危険なことにあったからよね。いろいろ、凌も凌で狙われていたし」
言い淀むお兄ちゃんに変わって司さんが代弁する。
言い換えれば…
「真琴に危険な目に遭って欲しくないのよ、凌は」
「司ぁ…!」
「何よ。本当のことでしょう」
ググッと言葉を飲み込むお兄ちゃんを思わず凝視してしまう。
お兄ちゃんが怒っていたのは私のため…?まさか。
自分で言うのもなんだけど、私いつもお兄ちゃんをいじめてるよ。
敬ってないよ。
いつも、キツく当たってるよ。
それなのに。
お兄ちゃんは私の心配をしてくれるというの?
お兄ちゃんと目が合う。
ポリポリと自身の頬をかき苦笑いを浮かべる。
「まあ、一応真琴は俺の妹だし、兄として心配するだろ…」
そう、聞き取れるか取れないかくらいの声で呟いた。