獣耳彼氏
ありがとう、大丈夫
『俺が経験しているからな。真琴には危険なことには関わって欲しくなかったんだよ。まあ、もうそんなこと言っても今更遅いけど』
そんなお兄ちゃんが投げやりに言った言葉が耳に残っている。
司さんの家を出たら既に外は夕暮れ。
長いこと話していたらしい。
秋月くんが出て行ってから恐らく、一時間は経っているだろう。
『何となく感じてたんだ。真琴にも俺と同じような力があるのだろうなって。だから余計にこっちの世界には来て欲しくなかった』
司さんに教えられた場所まで急ぐ。
聞いた所によると、そこは昔よく遊んだことのある公園で。
その裏に広がる雑木林の奥にある丘。
一度、秋月くんに連れて来られたことのある場所だった。
そこに、秋月くんは居るだろうとのこと。
『秋月と知り合っていたなんて、ビックリしたけどな。それに、狙われているとか…もう、逃げられない所まで踏み込んでしまったんだ。真琴は』
そう言ったお兄ちゃんの顔が頭から離れない。
真剣な表情で一切のふざけも入ってない顔。