獣耳彼氏
私が来ていることが分かっていたのだろうか。
何の反応も見せず、何も言わずに彼は顔を元に戻した。
そして、空を見上げる。
そんな彼の元へと足を進める。
何も言わずにジッと空を見つめる秋月くんの横に立つ。
私も上を見上げ、空を見るがそこには少しの星と月が煌々と輝いていた。
思わず秋月くんを探して追いかけて来てしまったけど、私はどうしたいの…?
どうして追いかけたの…?
心配だったから?
怖かったから?
どれも違う。
追いかけたいと思ったから追いかけた。
そして、私の気持ちを、この混乱している気持ちを吐き出したかったから。
それを伝えたいから。それだけ。
「秋月くん。ありがとうございます」
まずは、ありがとうと伝えたかったんだ。
チラリと秋月くんが私に視線をやる。
それを受けてニコリと微笑んだ。
「私のこと、守ってくれていたんですね。私、全然知らなくて。知らない内に守られていたんですね」
「別に、どうってことない」
秋月くんならそう言うと思った。
でも…