獣耳彼氏
部活前でよかったと本当に思う。
これが、朝だったり昼だったりした場合。
彼女を抑えることは難しかっただろう。
朝は朝でホームルームそっちのけで詰め寄るだろうし、昼は昼でお昼ご飯そっちのけで詰め寄るだろう。
それが部活前でなら多少、遅れたとしても大丈夫だから。
ということで、秋月くんとのことを京子に話したのだ。
私が離れることを決意したことを。
自分で決めたことを。全て。
「真琴。今、自分がどんな顔してるか知ってる?」
「え…?」
「すごく、辛そうな顔してる」
そんなんじゃ、真琴のこと信じられないよ…京子が眉を顰め伝える。
言っている京子の顔こそ辛そうで、今にも泣きそうになっていることに彼女は気付いているのか。
そんな彼女の言葉に自分の目元へと手を当てる。
しっとりと濡れた指先に涙が溜まっていたのだと理解する。
自分で決めたことなのに。
秋月くんと離れることを。
決めた、のに。