獣耳彼氏
私の覚悟は脆くて。
京子に話したことで、ようやく実感が湧いてきたのか。
秋月くんは私のことなんて、どうも思っていなかったんだ…
仕方なく私のことを守ってくれていたんだ…
私なんて、秋月くんにとっては何でもない存在なんだ。
私だけ、私だけが彼のことを思っていて…
「真琴…っ」
ぎゅっと温かいぬくもりに包まれた。
頭を抱えられ視界には何も映らない。
真っ暗闇の中、分かるのは道着の少し固い綿の感触だけ。
「真琴ぉ!こういう時は思う存分泣いてよ…!我慢なんてしないで、私が全部受け止めるからぁーっ」
ギュッと背中に回された腕に力が込められる。
身動きが取れないけど。
その苦しさが今の私には心地よかった。
温かいぬくもりが私の心を解きほぐしていく。
ずっと張り詰めていた心。
自分から別れを切り出したのに、泣くなんてズルイ。
そう思っていた心が、壁が決壊する。
「ふっ、う…」
気付いてしまったが最後。
次々と待ってましたと言わんばかりに溢れ出してくる涙。
それはすぐさまに彼女の道着へと吸い込まれていく。
しかし、止まることを知らない。
私の涙。