獣耳彼氏



弱いところなんて今まで見せてこなかった私が。


京子にもほとんど泣くようなことは見せなかった。


それが…



「う、うあぁー…っ!」



大きな声を上げて絶え間なく涙を流した。


まるで、迷子になった子どものように。



こんなにも、こんなにも好きだったんだ。


秋月くんと一緒に居るだけで安心できた。


彼と一緒にいる時の空気が好きだった。


彼の瞳が好きだった。


彼が居てくれたおかげで、部長から逃れられて普通の何でもない日常が送られるようになった。


平和な日常を手に入れることができた。


少し不思議なことに巻き込まれることもあったけど。


そんなの関係なしに私は秋月くんのことを好きになった。


彼が人でないと知っても。


何も変わらない。


妖狐の彼も、人間の彼も。


秋月くんそのものを私は好きになったのだから。



止めどなく溢れる涙がそれを物語った。


このまま何もなかったかのように、離れるなんて私にはできない。


だけど、秋月くんのことを思うと離るべきだと思った。


迷惑をかけたくない。


好きで、赤の他人の面倒を見る人なんて居ない。


人は何であれ自分への利益を求める生き物だ。


彼への迷惑を考えたら一緒には居られない。



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