獣耳彼氏

だからこそ、私は離れることを選択した。


決めたのは私だ。


それなのに、こうやって泣くなんて、なんてズルイ女なのだろう。



だけど、今だけは。


今だけは泣かして欲しい。


一回、思う存分泣けば私は立ち直れると思うから。


泣くのはこれきりにして、後は全て受け入れるから。


ただ、今だけは涙を流して。



京子の胸の中、私は泣き腫らした。


全ての感情も涙と一緒に流し出すかのように。


ひたすらに私の背中をさすってくれる京子の存在がすごく大きいものだった…



「…落ち着いた？」


「…ん、ごめん。京子」



しばらく無心に泣いていた。


それがようやく治った頃、京子が優しい声音で問いかけた。


ゆっくりと体を起こし、京子に向き直る。


今まで思いっきり泣いていたから、疲れたのと同時に恥ずかしい。


だけど、そんな私の心を他所に彼女は言う。



「真琴。ごめんよりも、ありがとうって言ってくれた方のが私は嬉しいな〜」



まるで、何でもなかったかのように、京子は笑みを浮かべる。


気を使わなくていい。


そう言っているみたいだ。