獣耳彼氏



ありがたくタオルを手に取り目頭に当てる。


ヒヤリと冷蔵庫で冷やされていたのか、その冷たさが腫れているだろう目頭には心地よかった。


視界がタオルで覆われたことで何も見えない中、疑問が降って湧いて出た。


なんで、私の目が腫れていることを司さんは知っているのだろう。


しばらく当てたことで少し温くなったタオルを外す。



「あの、なんで司さんは私の目が腫れていることを知って…」


「弟が事前に見ていたからね」



いたんですか?と続ける前に答えが出た。


しかし、その答えを私はすぐに理解することはできなかった。


弟が事前に見ていた。


弟がのところも分からないが、もっと分からないのは事前にというところだ。


それが顔に出ていたのだろう。


司さんが詳しく教えてくれた。



「私の弟はちょっとした過去と未来を夢で見るのよ。今回は貴方の未来を見たということね。それを私は聞いて知っていたの」



だからこうして予めタオルを用意していたのよ。


何の気なしにに言う司さんだけれど、それは予知夢というものでは…


その言葉は言い出せなかった。


だって、妖狐や龍が居るんだもん。


予知夢を見る人が居てもおかしくはないと思ってしまったから。


すんなりと納得してしまった自分がなんだか怖い。


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