獣耳彼氏



「真琴は秋のことが好きなのよね」


「う、えっ!?」


「だから、離れることを決意したのでしょう?」



唐突な言葉に目を丸くする。


だって、司さんの口から好きなんて言葉が出てくるとは思っていなかったから。


それも私が秋月くんをって。


ピンポイントに当てたことに驚く。



どうして司さんが知っているの?!


司さんと会ったことがあるのは、秋月くんと離れると決意したあの日だけ。


その日の数時間だけなのに、司さんは気付いたというのか私の気持ちに。


そうなると、どれだけ私は分かりやすいのかという問題になる。


それとも、まだ見ぬ司さんの弟さんが見たというのか。


それはそれで恥ずかしいことだ。


羞恥に打ち悶えていると司さんが再び問いかける。



「守られるのが嫌だから?」



私を真っ直ぐ見つめる彼女。


その瞳は黒く染められていて淀みない。


嘘なんてつけない。


本当のことしか伝えられないその瞳。


視線を一身に受けつつ頷く。



「はい。私は守られるだけの人にはなりたくないんです。それに…」



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