獣耳彼氏
秋月くんに迷惑をかけたくない。
その気持ちが大きく存在している。
俯き答える私を司さんが見ているのだろうことはヒシヒシと伝わってくる。
何かを考えているようにも伝わるけど。
彼女が何を思っているのか分からない。
どうして、こんなことを聞いてきたのかも。
「真琴。ドアを開けたということは強くなる覚悟はあるのよね?」
「あ、はい!それは、あります。自分の身は自分で守れるようになりたい、です」
身体的に強くなれたら、精神的にも強くなれそうだし。
最近はめっきり弱くなったと自分でも感じる。
主に、精神面でだけど。
精神が不安定だと全てのバランスが崩れる。
つまりは弱くなるんだ。
それは嫌だ。強くなりたい。
秋月くんに守られなくてもいいくらいに強くなりたい。
一人で大丈夫な人間になりたい。
そして、あわよくば逆に守ってあげられる人間になりたい。
そんなのは夢のまた夢だとは分かっているけど。
「じゃあ、決まりね」
「え?」
「真琴が強くなれるように協力するわ。貴方にも力の使い方を教えてあげる」
秋には内緒でね。
詳しいことはお兄ちゃんを交えてというので、最後にもう一度目を拭くと。
司さんと連れ立って部屋を出る。