獣耳彼氏
朝の早い時間に司さんが家に迎えに来て、連れられた先にはうちからそんなに離れていない所にある一軒家。
うちより敷地は広そうだ。
表札には瀧澤と書かれていたのを記憶している。
司さんの苗字は確か龍宮だったはず。
龍宮に瀧澤。漢字に龍が入っているから、リョクさんの繋がりというところなのだろう。
「あの、よろしくお願いします」
司さんの兄という要さんを前に私は頭を下げた。
真面目そうな年上の男性というイメージが強い要さん。
インテリメガネの要さん。見た目では強そうには見えないけど。
司さんやお兄ちゃんみたいに要さんにも何が力があるのかな。
そう思っていると司さんが私の前に出た。
「まずは、真琴に合った術が何なのか調べないと」
そう言うないなや、どこに潜めていたのか服の裾から数枚の紙を取り出した。
それは、この間秋月くんと戦っていた時にお兄ちゃんが使っていたものと同じに見える。
三枚の紙を右手に持つと残った三枚を私手渡した。
分からないなりにもそれを受け取る。
受け取った三枚は普通の紙と何ら変わりなく。
千円札と同じくらいの大きさの紙に墨で何やら文字のような図のようなものが書かれている。
三枚を見比べるとそれぞれ少しずつ違うけど。
「その札(フダ)を使って簡単に調べるわ」
見ていて。そう言うと、司さんは私に背を向けると持っていた札を自分の前へと投げ。
「発(ハツ)」
唱えた。