獣耳彼氏



視界が閉じられた中で要さんを探す。


もう一度、前後左右と。


本当のことを言うと気配を探るなんてこと初めてだ。


やれるのかやれないのか分からない。


だけど、実際に実行してみないことにはできるのかなんて分からない。


要さんのことだって同じだ。探さなければ分からない。



暗闇が広がる見えない視界の中。


そこに一つのの違和感を見つけた。


人の形をした白い靄。右手後方、約3メートル先。



そこか…っ!


目を開け、瞬間。足に力を込め跳躍する。


実際に目で見ると白い靄を感じた所には何もないし、誰も居ない。


だけど、自分が感じた直感を信じて。


私は拳を作り振った。


ーパシッ「よく分かったな」



私の拳を手のひらで受け止めたその人、要さんが言う。


メガネの外された要さんの瞳にはどこか不思議な色合いが混じっているように見えた。


黒い瞳の中に様々な色が入り混じる。


ギリギリと掴まれている拳を握り締められる。



「修行の成果、ですかね…!」



笑い掴まれている拳、腕を軸にあれを繰り出す。


背負い投げ。私の十八番でもあるそれ。


当然、得意なそれはとても綺麗に繰り出される。


全てがスローモーションのように感じて要さんの体が宙に浮く。


そして、大きな音を立て床へと叩きつけられる体。


振動が床から体全体に伝わってくる。


床に横たわる要さんの姿が目に入った。


呆然と目を見開く要さんがそこに居る。



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