獣耳彼氏
「あの兄相手によくやったわ。流石ね」
「いや、そんな…」
要さんを倒すことができたのは偶々だ。
気配を探ることができたのが、今回勝てた大きな理由な気がする。
咄嗟にやってできたことだから、常にできるとは限らない。
その点に関してはこれから意識していかないとだけど。
それに、私は要さんを背負い投げで倒すことはできたけど、意識を飛ばすまではできなかった。
そう考えると司さんのが凄い。
「司ぁ〜俺に会いに来てくれたのか!さすが、俺の天使…」
「うざっ…」
のびていたはずの要さんはすぐに起き上がり走り出す。
抱きつこうと腕を広げた瞬間、流れるように要さんを投げ飛ばした彼女。司さん。
飛んでく体は起き上がろうとしていたお兄ちゃんを巻き込み再び床に倒れた。
「…ぶっ!」
飛ばされている最中、ふと見えた要さんの顔は幸せそうで。
やはり、残念な兄なんだと理解した瞬間だった。
初対面の時からなんとなく感じていたけど、シスコンか…
お兄ちゃんがこんなんだったら、もう標的でしかないな。空手のいい技かけのカモだ。
いや、それすらも喜び出したらもう関わりたくもなくなるか。
そう考えるとうちのお兄ちゃんは普通で本当によかった。
「なんか、俺災難じゃね…」
床に胡座をかき、座り込むお兄ちゃんが小さく呟いていた。